神々のはじまり・1

    太古の世界を語る上で外せない神がいる。それは、オーディンである。おそらく、誰もが名前くらいは知っているだろう。灰色の髭を蓄え、隻眼の老人姿で描かれることが多いこの神に対して、みなはどんなイメージを持っているだろうか。

    偉大なる神?
    世界を救おうとした神?
    死者を集めた神?

    確かにそのイメージは正しい。しかし、それはオーディンの側面にすらならないほどの一部分でしかない。戦争と死の神であり、呪術の神でもあり、知識と詩の神、また他、様々な性質を持つオーディン。このオーディンは世界の創造、そして破滅の原因まで、全てに関わっている。また、我々人間を作ったのもこのオーディンだと言われている。それでは、まずこのオーディンはどうやって誕生し、世界を創っていったかを述べていこう。

    オーディンら神々が誕生するはるか以前には、ギンヌンガガプと呼ばれる深淵な裂け目があった。北には極寒の世界であるニヴルヘイム、南には灼熱の世界であるムスッペルスヘイムがあり、この2つの世界しか存在しなかった。しかし、この世界では神々がいないだけで、スルトを中心としたムスペッルと呼ばれる住人たちがいた。

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