ある日、主人公はひとりの女の子と出会った。父親に連れられてやってきたその女の子は毎日泣いてばかり。はじめはうっとうしく思っていた主人公も、次第に女の子を笑わせてみたいと思うようになる。「お母さんに会いたい」。女の子の願いをかなえるために、主人公は少ないお小遣いを使って1枚のハガキを買う。それは、幼い子供が単純に考えたこと。お母さんに手紙をかけばきっと会える。でも、その時、女の子がはじめて笑った。
数日後。女の子が目をきらきらさせながら書いて出した手紙の返事はまだこない。ハガキを出した次の日から、女の子はポストをのぞきに行ってはしょんぼりともどってくる毎日を過ごしていた。そんなある日、女の子が出した手紙がもどってきた。不思議に思った主人公が父親に聞くと、父親は悲しそうな目をしながら主人公の頭を優しくなでた。それが意味すること…。主人公はもう1枚ハガキを買った。
それからしばらくして女の子宛に手紙が届く。ハガキを手にとって喜ぶ女の子。「よかったな」。主人公がそう言うと、女の子は満面の笑みで主人公にこう言った。「ありがとう。おにいちゃん…」。
はじめてお兄ちゃんと呼ばれた冬の日。そして月日は流れて……。
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