グングニルとは・1

    グングニルとは、太古の世界においての主神であるオーディンが持っていた槍でオーディンの象徴ともいえる。では、まずこのグングニルを持っていたオーディンとは、どのような神だったのかを述べてみよう。

    オーディンは、多くの肖像画においてつばの広い帽子を被り、青いマントを羽織り隻眼で長い髭を蓄えた老人で描かれているが、アースガルズにいる時は黄金の鎧を纏っていたという。他にも、ある時は渡し守、ある時は青年に、また人間の姿以外にも鷲などにも変身している。彼が持つ、名前の多さはこういった多くの外見を持つことからも由来しているのであろう。名前が多いということは、それだけ多くの性質を持つことである。そして名前、ひとつひとつには力が宿る。例えば、鉄の棒が剣という名称を持つことによって武器と認識される。カスティリア王国では、この名前や言葉によって力が宿ることを「言霊」と呼ぶそうだが、彼はこの言霊を数多く所有することによって力が強大になったと思われる。

    オーディンは王侯たちに不和を呼び望むままに戦争を起こし、ラグナロクに備えていた。優秀な戦士たちは、戦争によって死ぬと彼の元に集まるようになっていて、この戦死者の選定も彼自身が行っていたのである。そして時には、彼自ら気に入った戦士をグングニルで殺し自分の元へ招くこともあった。

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