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「もう……未羽ちゃんったら、甘えんぼうさんなんだから」

手放しで甘えてくる未羽が可愛いらしく、かぐらも未羽を邪険に扱わない。
未羽が満足して離れるまで、引き剥がすことなく、じっと待ちながら、頭を撫でていてくれる。
「あたし、この学苑に入学して良かったって思うんです!」

ひとしきり、かぐらの胸元に擦り寄ってから、顔を上げた未羽がにっこりと笑う。

「ねぇ、ウソじゃないですよ? ホントのホントですよ!」
「やだなぁ、未羽ちゃん、誰も疑ってないってば」
「だってーぇ! ……んー、もう、どうしたら、あたしのこの嬉しさが伝わるんだろう? 言葉なんかじゃ伝わんないかな? 歌っちゃった方が早いかも!」
「……歌うのは構わないけれど、その前に、ドアを閉めなさい」

冷静な声が降ってくる。

「あ、織歌ちゃん、いらっしゃい……って言うのも変だね」

新しく入ってきた後輩に向けて、かぐらがにっこりと微笑んだ。

「いえ、わたしは宮藤先輩の練習時間に便乗して、ここの練習室を使わせてもらっている居候の身ですから、宮藤先輩が『いらっしゃい』とおっしゃるのは間違っていないと思います」
「もー、おりちゃん、相変わらず堅苦しいんだから!」

可愛らしく憤慨する様子を見せて、未羽が織歌へと駆け寄っていく。
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開けっ放しだったドアを適当に閉め、織歌の背中をぐいぐいと押して、かぐらの前へと差し出した。

「かぐら先輩、おりちゃんも、ぎゅってしてほしいんですって!」
「何を言っているのよ、わたしは何も……」
「うふふ」

かぐらはにっこり微笑んで、目の前に立ち尽くしている織歌へと手を伸ばして、そっと抱きしめた。
「甘えてもいいんだよ、織歌ちゃん」
「わ、わたしは……」
「織歌ちゃんが『甘えちゃいけない』って自分を律するのはすごいって思うし、尊敬もするけど、未羽ちゃんほどでなくても、わたしは織歌ちゃんに甘えてほしいって思ってるんだよ?」
「でも……ご迷惑なのでは……」
「可愛い後輩に甘えられるのを迷惑だなんて、思うわけないよ。むしろ逆だよ、織歌ちゃん」
「ですよねー、かぐらせーんぱいっ!」

織歌を抱きしめたかぐらごと、未羽が腕を伸ばして抱きしめる。

「あたしねっ、最初、この学苑に入ろうなんて思ってなかったの。かぐら先輩のストリート・ライブを聞いてから、あのステキな人はどこの学校に通っているのかなーって思って、この学苑のことを調べてみることになったんだけど、自宅から通えないし、寮生活だし、校則は厳しいし、ちょっとやだなーって思ってたの」
「うふふ、この学苑の校則、確かにちょっと厳しいもんね」

かぐらの言葉に、こくりと織歌も頷いた。
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