〜第一章〜
「ほらほら、ケンカしないの。リルテ、お洋服きれいにしてあげるからこっちに来て」
シェルが二人をたしなめる。醸し出す雰囲気通り優等生タイプのようだ。
「うぅ〜シェルちゃ〜ん。ありがとー」
「メアマーナ サラマール…」
シェルが呪文を唱えながら手をかざすと、リルテが光の輪に包み込まれる。
「リーア!」
シェルが呪文を言い終えると同時に光がはじけ、リルテの洋服は洗いたてのような輝きを取り戻した。
「シェルは相変わらずすごいねー。あたしそんな簡単に魔法唱えられないよ」
「うんうん。リルテも全然ダメ〜」
二人は口ぐちにシェルを褒め始める。シェルは学業優秀で魔法も二人よりは上手に唱えられる。
「すごいことではないわ。あなたたちだって出来るじゃない」
「だってあたしが魔法かけたらもっと時間かかっちゃうよー」
「マールちゃんの魔法じゃ反対にお洋服が汚れちゃうかもなのー」
天然ほわほわな性格からか、シェルだけではなくマールにも何かと世話を焼かれているリルテだが、マールには突っかかることが多い。マールは少しだけ不満だが、大らかな(大雑把とも言うが)性格も手伝ってついつい悪ノリしてしまう。
「なんだとー!じゃあかけてやるー!メアマーナ…」
「こら!ケンカしちゃダメ!全く、もうすぐ修行に出かけるのよ。もっとしっかりしないと進級できなくなっちゃうわよ」
再び言い合いを始めてしまった二人をたしなめつつも、シェルは仲の良い二人と過ごせる時間に愛おしさを感じていた。
少女たち三人はみな今年で10歳になる。人間界で言うところの小学校にあたる王立魔法学校初等科の4年生だ。
魔法学校は初等科、中等科、高等科に分かれ、学ぶ魔法も少しずつ難しくなっていく。 高等科卒業時の成績や実力によって将来が決まるシステムで、実力さえあれば誰でも王室に入ることが出来る。 そして誰でもリュミナス王国の女王となる資格を持っていることにもなるのだ。
それぞれの科では「修行」という実習があり、この修行の成果が魔女としての実力を図る物差しとなっている。
初等科での修行は人間界に赴き、ホームステイを行いながら家族の中の一人をお手伝いをするというもの。
初等科の修行は4年生の夏休みを利用して行われる。その夏休みのスタートは一週間後に迫っていた。
「修行…ちょっとドキドキするなの…。リルテ、ちゃんとできるかなぁ」
「えー、あたしはすっごく楽しみ!初めての人間界だよ!きっとたっくさん面白いことがあるよ!」
大好きな2人の前ではあまり感じさせないが、リルテは少し臆病なところがある。ドジが激しく気合いが入っている ときほど失敗してしまうので最後までやり遂げることがなかなか出来ないのだ。
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