「では今日はここまでにしましょう」
スーラは教科書を閉じシェルを見つめた。いつもより10分ほど終わるのが早い。
スーラはシェルについている家庭教師の中でも格別厳しくシェルに教えている講師で、時間をオーバーすることはしょっちゅうだ。スーラの教え方は厳しいがとても丁寧で、項目を段階的に理解させて実力を向上させていく手法を取っている。そしてその各段階を完全に理解させてからでないと絶対に次に進まない。シェルは理解力を総動員して授業に臨んでいるが、どうしても理解できない箇所も多々ある。そんなときにスーラは時間を大幅に延長してでもシェルに理解させようと努力する。
厳しいことは承知の上で、スーラはシェルが最も信頼している講師の一人だ。
そのスーラが授業を早めに切り上げるには理由があるはずだが、今日のシェルは授業内容を全て理解したとは言い難い状況だ。
「先生、わたし今日の内容をまだ…」
シェルは素直に伝えることにした。スーラに用事があるのかもしれないが、事前に伝えないわけはない。
「今日は内容を十分に理解していない、ということを理解していることが大事ですよ、シェル様」
「え?」
スーラは変わらずシェルを見つめている。厳しい口調だが怒っているわけではないようだ。
「ご自分でお分かりになっているのでしょう?」