〜第二章〜
今日はいつものような集中力がなく理解が進まなかった。決して授業をおろそかにしたつもりはなかったが、スーラにはお見通しだったようだ。
「すみません、スーラ先生。今日は集中力が足りませんでした。次回までにしっかり勉強しておきます」
シェルは完璧主義を貫いている。子供のころから女王となるための教育を受けていることで身に付けたことで、しっかり理解した上で次のステップに進むというスーラの教えの影響も多分に受けている。
なんでもそつなくこなすタイプだが、それは完璧主義であることと負けず嫌いな性格からくるものだ。
そんなシェルだからこそ今日の自分の不甲斐なさははっきり自覚している。
「シェル様。夢というものがどのようなものかご存じですか?」
スーラは優しく諭すようにシェルに語りかけた。
「夢…ですか?」 シェルは大きく広大な空で羽を持った自分が自由自在に飛び回っているイメージを想像した。
「やはりシェル様は分かってらっしゃるのですね。安心致しました」
≪夢≫という言葉に対してのイメージを伝えると、スーラは微笑んで話し始めた。
「特にシェル様くらいのご年齢であれば、それは無限に近いほどに広がっているもの。ご自分でその可能性に蓋をなされてしまっては未来が泣いてしまいますよ」
「先生……。わたし……!」
シェルはスーラの言わんとしていることがはっきり分かった。そして仲良しの二人が気付いていることを、スーラもまた気付いているということもはっきりと感じた。
「シェル様のお父様やお母様が厳しくされるのもお考えあってのこと。でもシェル様にはシェル様のお考えがおありなのでしょう?それはきっとお二人にも伝わっておりますよ」
* * *
『お父様とお母様の考え……わたしの考え……』
授業の時間が終わりスーラが帰宅した後もシェルは物思いに沈んでいた。食事の準備が終わったことを知らせに来たメルがノックする音でようやくシェルは顔をあげた。
「ありがとう、メル。今行きます」
明かりも付けずにいたシェルの部屋に廊下の光が差し込んできた。
「お嬢様ったら。明かりもお付けにならないでどうされたのですか?」
「ごめんなさい。考え事をしていたものだから」
メルは扉を開けてシェルの部屋に入ってきた。表情は見えないが言葉の響きでメルに心配をかけてしまったことが分かる。
「お嬢様。何かございました?」
真っ暗な中で座り込んでいたらメルでなくても心配する。
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