〜第三章〜
「たっだいまーっ!!」
勢いよく自宅の扉を開けたマールは一目散にパン工房に向かった。マールの自宅はパン屋を営んでおり、 工房ではマールのママが今日もパンを焼いている。 ママの回りにはマールの双子の妹たちがまとわりついていて、マールが入ってくると二人ともマールの元に飛び込んできた。
「マールちゃんおっかえりー!!」
「あら、おかえりマール」
ママと双子の妹がマールを出迎える。工房ではママが魔法を使って次々とパンを焼いている。 相変わらず見とれてしまうほどの腕前でおいしそうなパンが次々に焼かれている。 マールは妹たちと一緒にお店の手伝いをしながら、ママがパンを焼くところを見ているのが大好きだ。 ママもマールたち家族に見守られていることでより大きな力が発揮できるようで、工房には必ず誰か家族がいてママを応援している。
「今日もちゃーんとママの応援してたかな?」
マールが双子の妹に尋ねると元気な返事が返ってきた。 まだ魔法学校に入学する年齢になっていない妹たちはママの応援の主戦力だ。 マールの家はこのパン屋を開いたマールのひいおじいちゃんとひいおばあちゃん、 後を継いだおじいちゃんとおばあちゃん、現在お店を切り盛りしているパパとママ、 マールたち5人姉妹の総勢11人の大家族だ。 マールの双子の姉は修業に出ていて家にはいないので、今は9人がこの家に暮らしている。
全員働き者でひいおじいちゃんとひいおばあちゃんは材料の仕入れをしているし、 おじいちゃんとパパはお店の運営をしている。 そしておばあちゃんとママが工房担当だ。
ママが昨年のコンテスト出場以来魔力に一段と磨きがかかっていて、最近はママが工房を一手に引き受けるようになっている。 マールは家族みんなを大好きなのはもちろんだが、その中でもママが一番の自慢だ。
マールの家はリュミナス王国商業区にある。王国の外側に近い方に位置している区画だが、王室は元より貴族特区や芸術特区、庶民地区から毎日大勢の人々が詰めかけるリュミナス王国の中では最も活気のある区画である。
リュミナス王国の区画は王城を中心として円状に広がっているため、外側に広がるほど端と端の距離が長くなってしまう。
そこで、王国民の生活を一手に引き受ける商業区は買い物の便を考え、大きく四つの区画に分かれている。
マールの家は主に食料品を扱う区画のほぼ中央に位置するメインストリートの一角に店を構えている。
マールのおじいちゃんやおばあちゃん、パパやママの兄弟姉妹たちもパン屋を営んでおり、さながらチェーン店の趣きもある マールの家は、リュミナス王国でも五指に入るほどの人気店である。昨年開かれた王国主催のパンコンテストでも 見事上位入賞を果たしお客さんは引きも切らない状況だ。毎年コンテストに上位入賞しているからこその人気ではあるが、 昨年のコンテストはマールたち家族全員にとって特別なものだった。
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