 |

自宅の電話を使われると、こうして自分がリビングでゴロゴロしていると、嫌でも会話内容が聞こえてくるではないか。
聞きたくもないものを聞かされる、こっちの身にもなってほしい……。
「うふふ、行きたいのは山々だけどぉ、成績落ちたらマズいのよね〜。ほら、あたし、無理して遠い学校に通わせてもらってるから〜ぁ」
「……はぁ」

ため息が漏れる。
何が無理して遠い学校に通わせてもらっている、だ。
その遠い学校に通わせてくれなきゃ家出してやると無理を言ったクセに。
不機嫌全開で、未羽は煎餅をバリバリかじった。
姉の電話なんて聞きたくなかったが、このリビングから出て行きたくもない。

「え? ……ああ、妹がお煎餅を食べてるのよ。うふふ、ポロポロ食べこぼして、子供みたい」

その言葉で、未羽の忍耐心は決壊した。

「ちょっと、お姉ちゃん、家の電話で彼氏に電話するの、やめてよっ!」

しかし、姉は面倒くさそうに、手でしっしっと追い払うようなジェスチャーをする。

「ん〜? あ、妹が何か言ってるけど、気にしないで? あたしがこうしてケンちゃんとお話してると、いっつも邪魔しに来るんだも……あれ?」
|
 |

切れてしまった通話に、未羽の姉は不思議そうな顔をして受話器を見つめる。
その間に、ドタドタと足音荒く、未羽はリビングを出て自分の部屋に戻った。
電話線を抜いてやったくらいでは、この不機嫌さは解消されない。
ベッドにダイブして枕に顔をうずめていると、ノックもなしにドアが開けられた。

「未羽! ちょっとあんた、どーして人の電話切っちゃうのよ!?」
「だったら、部屋でケータイで電話すれば良いでしょ」

姉の抗議に、むっくりと身体を起こし、不貞腐れた口調で姉へと反論する。
しかし、姉は余裕の表情を浮かべると、未羽の断りもなく、部屋へと入ってきた。

「それはそうと、あんた、高校はドコ行くつもりよ?」

ニヤニヤと笑っている姉へと、未羽は枕を投げつけた。

「お姉ちゃんには関係ないでしょ!」
「それが大アリなのよね」

未羽の投げた枕をあっさりキャッチしながら、それでも姉はまだニヤニヤしている。
「未羽って、将来は歌手になりたいんでしょ?」
「別に!」
「ケンちゃんの学校のOBの人がさぁ、上月家の美人姉妹を売り出したいって言ってるんだけどさぁ、やっぱり姉妹揃って同じ学校の方がインパクトがあるらしいのよねぇ」
「……」
|
 |