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未羽は不機嫌そうに眉間にシワを作る。

「売り出したい、って……お姉ちゃん、音痴じゃん」
「音痴じゃないわよ、失礼ね!」

ボスッと枕を投げつけられた。

「そりゃ確かに、あんたと比べりゃ音痴かもしんないけど! でも、最近は別に歌が上手じゃなくても歌手になれ……ブッ!」

投げ返された枕を投げるつけと、ちょうど姉の顔にヒットする。
が、気分は全然晴れない。

「ふざけないでよ、あたしの未来にお姉ちゃんが口出しする権利ないでしょ! それに、あたし、芸能界なんて真っ平なんだから!」
「わっかんない子ね! ちょっと歌っただけで、チヤホヤされて、キレイな衣装を着せてもらえて、贅沢な暮らしができるんだよ? そのチャンスが転がってるのに、あんた、馬鹿なんじゃないの!?」
「馬鹿なのはお姉ちゃんの方だよ! そんな上辺だけの歌手なんて使い捨てにされるに決まってる! あたしは、使い捨てにされない、歌で誰かを感動させることができる歌手になりたいの! その前に、歌手になるかどうかなんて、まだ決めてない!」
「未羽のバカッ!」

姉がまた枕を投げてきた。

「せっかく良い話だって思ったから持ってきてあげたのに! あんたなんかには、あの地味〜な墓石みたいな制服がお似合いよ!」
「頼まれたって、お姉ちゃんの学校になんか行かないよ!」
「あたしだって、あんたがあたしの後輩になるなんて願い下げよ!」

バンッと乱暴にドアが閉められる。
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「お姉ちゃんのバカッ!」

憤りのまま、未羽は枕をドアに向かって投げつけた。
枕を投げつけたところで、たかぶった気持ちはまだ治まらない。
イライラした感情を持て余して、未羽は布団を被って、ベッドに丸くなった。

「未羽、もしかしなくても機嫌悪い?」

昼休みに、おそるおそるクラスメイトがきいてきた。
むっすりと膨れっ面のまま、未羽はゆっくりと頷く。

「なに、また姉妹ゲンカ?」

再び未羽は頷く。

「歌が上手くなくても歌手になれるってさ」
「あー、そりゃまた未羽ちゃんの地雷を踏んでくれちゃったんだねぇ」

別のクラスメイトによしよしと頭を撫でられて、また未羽がぷぅっと膨れる。

「でもさ、未羽のお姉ちゃんって、確かH女学院に行ってなかったっけ、あの可愛い制服の?」
「売り出しやすいから、ウチに来いとか何とか言ってた」
「あ、そっか……H女って音楽科あるもんね」
「でも、あたしは、毎日往復3時間の通学なんて、絶対に嫌だもん!」
「……友達と別れるのが嫌だって言ってくれないのが、未羽らしいよ」

2人の友達を前に、未羽は唇を尖らせた。
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