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「しょーがないなぁ、そんな傷心の未羽ちゃんの気晴らしに付き合ってあげよう」
「ユカ?」

ユカと呼ばれた少女はニヤッと笑って、未羽に耳打ちした。

「今日の夜7時、K駅前の南口ロータリーで待ってて。きっと未羽の気に入るようなことがあるから」

未羽が驚きに顔を上げたと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴った。

「え、ちょっと、ユカ、今のは……?」

が、ユカはニヤニヤ笑いながら、未羽に手を振って、自分の席に戻った。
未羽は別の友達を見た。

「ナオミ、ユカが……」

しかし、ナオミは未羽が振り向くより早く、自分の席に就いている。

「夜7時にK駅前南口ロータリー……?」

未羽は首をかしげながら、教室のドアをあけて教師が入ってくるのを、ボンヤリと見つめていた。

あの後、2人を捕まえようとしたものの、逃げられてしまい、放課後になってしまった。
結局、2人から何の話も聞き出せず、未羽は更に不機嫌になって、自宅へと帰る。

「あんなの約束でも何でもないんだから」
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唇を尖らせて、ベッドに寝転んだ。
姉はまだ帰ってきていない。
母もまだ戻ってきていない。

「……」

寝転んだまま、チラッと時計を見ると、既に5時半を回っている。

「……」
別に約束をしたわけではないのだから、このまま家にいても誰も自分を責めることはできない。
けれど……。

『今日の夜7時、K駅前の南口ロータリーで待ってて。きっと未羽の気に入るようなことがあるから』

ユカの声が脳裏をよぎる。

「……あたしの気に入るようなことって何だろう?」

未羽はむっくりと起き上がった。
今から出かける準備をすれば、ギリギリで7時の待ち合わせに間に合うかもしれない。
間に合わなくても、ユカたちには用事があったとでも何とでも言って誤魔化せるはずだ。

「だって、あたしの予定を聞かずに、勝手に時間を指定してきたのはユカたちだもんね!」

まるで自分に言い訳でもするかのように呟いて、未羽はベッドから飛び降りた。
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