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待ち合わせのK駅は、家路を急ぐ人と、通勤帰りに一杯ひっかけていこうという人でごった返していた。
人の波を掻き分けながら、駅の表示に従って南口へ急ぐ。
逆方向へと行こうとするサラリーマンのカバンに、お気に入りのふわふわのスカートが引っかかってしまって、足止めまで食らってしまった未羽は、改札を出て、南口に辿り着いた時にはまた不機嫌になってしまっていた。
しかも、南口ロータリーにも人だかりが出来ていて、気分転換にもなりそうにない。

「……あーあ、もう……来るんじゃなかったー」

眉間のシワが深くなる。
わざわざ交通費をかけてやって来たというのに、このまま回れ右をすることは、その金額と労力を無駄にすることになる。
チラッと時計を見ると、もう7時になっていた。
取り敢えず、もうしばらくここにいて、帰るのは何が起きるのか見届けてからでも良いかもしれない。
そう思って、ロータリーのガードレールに腰をかけて、キョロキョロと周囲を見回してみる。
一方的に約束を取り付けた友達の姿は見えない。

「あーあ、待ってるだけなんてつまんないなーぁ」

何するともなく集まっている人たちを見ると、自分たちと同じ年齢からおじいちゃん・おばあちゃんまで、いろいろな人がいた。
何気なく見ていると、その人たちに共通していることに未羽は気づいた。
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「あれ……」

ゆっくりと立ち上がる。
みんな、楽しそうな表情で、何かを待っているようだった。

「……?」
人だかりの向こうに何かがあるのだ、きっと。
そう察知した未羽は、人の群れを掻き分けて前へと進んだ。
その刹那。
胸の奥深くを鋭く突き刺すような、それでいて、ささくれだった心を優しく包み込むような音が周囲に響き渡った。

< 続く >
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