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『パッショネイト・メロディ 2』

突如として響き渡った音に、はっとして未羽が顔を上げる。
前方をふさいでいた人の波が途切れ、最前列へと飛び出した。

「……ぁ」

最初は、声が出なかった。
鋭いのに柔らかな音の奔流に、体内の時間が止まってしまったような錯覚を覚える。
ひらけた視界には、見慣れない鍵盤楽器を並べて演奏している2人の女性がいた。
1人は見たことのない制服を着ている中高生らしい女の子で、一所懸命な様子でメインメロディを演奏している。
もう1人の女性はラフな私服姿で、制服姿の女の子のメロディを優しく補佐するような演奏している。
2人の手元のキーボードのような楽器からは、今まで聴いたことのないような不思議な音色が零れ落ちるようなイメージを伴って周囲に流れていて、未羽は呆然としたまま、2人の演奏に釘付けになっていた。
制服の子の演奏は、慣れていないのか、時々、つっかえるような音になる。
その度に、私服姿の女性の演奏がサポートしていた。
まるで、よちよち歩きの子供と、その覚束ない歩行を優しい目で見つめる母親のイメージが、未羽の脳裏に広がる。
そのイメージからか、つっかかるような演奏にさえも、愛しさがこみ上げてきた。
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何度目かで彼女の演奏がつかえたとき、思わず声が出た。

「頑張って!」

制服姿の子は、演奏を止めないながらも、びっくりしたような表情で未羽を見た。
それから、微笑みながら、ありがとう、と言ってくれた。もっとも、演奏の音にかき消されて未羽の耳には届かなかったけれど。
未羽はキラキラした目で、一所懸命に楽器を演奏している女の子を見つめる。
たぶん、年齢は未羽とそう離れてはいないはず。
頑張って、がんばって……。
そう呟きながら、女の子の一挙手一投足を見守った。

やがて、演奏が終わり、未羽は大きく息を吐き出した。
知らない内に緊張して、身体に力が入っていたらしく、ほどよい疲労感を覚える。

「みんな、今日も集まってくれてありがとう!」

私服姿の女性が、集まった聴衆へと声を張り上げる。
マイクも使わずに、良く通る澄んだ声だった。

「今日は、お友達のかぐらちゃんが加わってくれることになったんだよ。さ、かぐらちゃん、一言どうぞ?」
「あ、えー……っと……、その……。こ、こんにちは、宮藤かぐらです。えっと……」

たどたどしく言葉を紡ぐ姿に、未羽はまた声を上げる。
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