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「頑張って!」

かぐらと名乗った少女は、頬を染めながら未羽を見た。
そして、微笑みを浮かべると、こくりと頷いた。

「わ、わたしなんかがこんな場所で演奏しちゃって良いのかなって思ったんですけど……、その……ゆうなさんに誘われて、来ちゃいました。えと……」

私服姿の女性は『ゆうな』という名前らしいと判断して、未羽はゆうなを見た。
まだ幼さの残るかぐらとは違い、ゆうなには大人の女性らしい落ち着きが感じられる。
全体的な雰囲気から、高校生か大学生かそのあたりだろうと予想をつけ、未羽はかぐらへと視線を戻した。

「あの……ごめんなさい、何度もミスちゃって……。それでも、少しでも楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです」

聴衆の中から「ミスなんて大丈夫!」という声援が飛ぶ。
未羽も、その声援にこくこくと大きく頷いた。
かぐらは照れたような微笑みを浮かべている。

「あの……ありがとうございます。これからも、いっぱい練習して、頑張ります」
「大丈夫だよ、普段のかぐらちゃんは良い演奏できてるって! こういう風に、人前で演奏する度胸さえつけば、すぐにでも、ここの人たちを楽しませることができるよ!」
「そ、そうかな……?」
「そうだよ、かぐらちゃん、自信を持って!」
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恥ずかしそうに微笑むかぐらは、見ているだけで応援したくなる、不思議な雰囲気を持っているように未羽には感じられた。

かぐらが一歩下がって、ゆうなの演奏が始まった。
本来のストリートライブはゆうながメインで演奏するものだったらしいということは、先ほどのゆうなの言葉でわかったのだが、未羽はゆうなの演奏を聞きながら、さっきまでの熱気がどこか冷めているような気がしてならなかった。
どうして、あたしは、あの人……ゆうなさんの演奏にあんなにドキドキしないんだろう……?

「もう! ちょっと、未羽!」

バシッと肩を叩かれて、我に返る。

「約束の時間、もう15分も過ぎてるんだけど!」

振り向くと、ユカとナオミが立っていた。

「あたしはちゃんと7時に来たよ?」

ムッとして言い返す。

「ってゆーか、こんなに混雑するんなら先に言ってよ! 探せないじゃ……」
「未羽ちゃん、演奏中だから……その話は、後で、ね?」

ナオミが唇に手を当てて囁く。
ユカは怒っているようだったが、怒られるようないわれはないと思った未羽は、視線をゆうなに戻して、不思議な旋律に耳を傾けることにした。
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