パッショネイト・メロディ 2

「あーん、もう、かぐらさんの演奏、すっごく良かったぁ!」
「……その言葉、何回も聞いたよ」

かぐらたちが演奏していたロータリーから、自分たちが住んでいる町までは、電車で約1時間かかる。
電車に乗っている間、ずっと未羽はかぐらの演奏を褒めていた。
友人2人は呆れた様子で、顔を見合わせている。

「わたしたち、ゆうなさんの演奏を見せたくて呼んだのよ?」

苦笑しながらナオミが言う。

「んー、ゆうなさんの演奏も良かったけど、あたしには、かぐらさんの演奏のがグッと来たのよね〜! 確かに、ゆうなさんよりも全然下手だけど、何てゆーか、こう……頑張れ〜って応援してあげたくなるって感じ?」

言った後、かぐらが演奏していた曲を口ずさむ。

「あーん、また聞きたいなー、かぐらさんの演奏! ね、いつもあの場所で演奏してるのかな?」
「いつもじゃないみたいよ? というか、あんたの好きなかぐらさんとやらは、初めてみたいだったし」

最初こそ未羽が遅刻したと怒っていたユカだったが、喜びまくる未羽を見て、怒りは治まったようだ。苦笑混じりに、未羽に教えている。

「また会いたいなー。でも、あの駅まで毎日は通えないよなー。でも、会いたいなー」

聞いているんだか、聞いていないんだかわからない未羽の様子に、友人2人はまた顔を見合わせて苦笑していた。

それから数日後。
担任から渡された紙を見ながら、未羽は自宅のベッドの上、ゴロゴロしながら唸っていた。

「うーん……進路……。そろそろ決めないといけないんだけどなー……」

進路調査票と印刷されたその用紙には、第3希望までの学校名を記入する欄がある。

「取り敢えず、お姉ちゃんの学校にだけは、死んでも行かないってことだけは決まってるんだけどなー」

言いながら、左右にゴロゴロする。
その時、机の上に置いたままだった携帯電話が鳴り響いた。
窓に表示された名前を確認してから、通話ボタンを押す。

「あー、もしもし、ユカ?」
『喜べ、未羽! かぐらって人のこと、ちょっとわかったよ!』
「ホント!? 嬉しい!」

意気込んで話すユカの話に耳を傾ける。
ユカの情報によると、かぐらは桜立舎学苑という聞いたことのない学校の1年生だとわかった。
そして、かぐらとゆうなが演奏していた、あの見たことのない鍵盤楽器はフォルテールという、何だか良くわからないけれど、ある才能がないと音が出せない、不思議な楽器だということだ。

『あんたの代わりに、ライブに来てた人たちから情報を仕入れてあげたんだそ! 感謝しろ!』
「はーい、感謝しまーす! チュッ!」
『キモいことすんな!』
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