パッショネイト・メロディ 2

「あははっ、ユカ、ありがとー!」

ハイテンションで軽口を応酬する。

「えーっと……かぐらさんの学校って、ドコにあるの?」
『ん、桜立舎? 確か、あのライブやってた駅からそう遠くはないと思うけど……あんた、桜立舎、知らないの?』

呆れ返った様子の声が電話の向こうから響いてくる。
ここで見栄を張っても仕方がないので、未羽はこっくりと頷いた。

「知らない」

その途端、電話の向こうから、盛大なため息が聞こえてくる。

『知らない、ってあんた……あそこは全生徒に音楽教育を施すことで有名でしょ? 何でも、良い音楽で、生徒が持っている才能を引き出してどうこう……とか』
「そうなんだ……」
『未羽って学校にあんまり興味ないもんね〜』

電話の向こうでケラケラとユカが笑っている。
笑い声と同時に、車のエンジンの音が聞こえる。
どうやらユカは外にいるようだった。

「あの……ユカ?」
『あん?』
「その……ありがとう」
『……なーにを今更! あたしたち友達じゃん!』

飾らないユカの親切にジンと胸の奥があたたかくなる。
それから少し喋ってから、未羽はユカとの通話を切った。

次の日、早速、未羽は進路指導室で学苑のことを調べてみた。

「う、わー……」

ファイリングされた資料は想像を超えていて、書かれている内容を読めば読むほど、未羽はただ唖然とする。
とにもかくにも、桜立舎学苑はお嬢様学校らしい。
そこに書かれている、ハイソサエティちっくな香りに、庶民派の未羽は思い切り引いていた。

「幼稚舎から大学までの一貫教育……って、うわぁ……希望者には寮生活も可能……ひえぇ」

ページをめくる度に、未羽の心には『メンドクサ』という思いが大きくなってくる。

「ほぅ、桜立舎か……上月には合っているかもしれんな」

頭上から声が降ってきた。
慌てて立ち上がると、進路指導担当の教師が立っている。

「どうして……先生はあたしに合ってるって思うんですか?」

教師は未羽を見て、ニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。
 
「お嬢様学校だからな。校則も厳しいらしいし、上月の騒がしい性格を矯正してくれるかもしれんだろ?」
「……ぶー!」

未羽は頬を膨らませ、パタンとファイルを閉じる。
前へ -5- 次へ
●ウィンドウを閉じる●