パッショネイト・メロディ 2

「まぁ、そうムクれるな。歴代の卒業生の中でも、うちから入学した生徒は数人しかいないが、音楽が好きな生徒にとってはパラダイスだって言ってたヤツもいるから、本格派シンガーを目指している上月にも、パラダイスになるんじゃないか?」
「パラダイス、ねぇ……」

腕の中のファイルを見る。
どんなに音楽の授業が楽しくても、お嬢様学校はちょっと嫌だと思った。
未羽のイメージでは、お嬢様は世間知らずで、鼻持ちならない金持ちで、未羽のような庶民を馬鹿にしてそうで、そんな中に入ったら最後、とても肩身が狭い思いをしそうだと思った。

「ま、受験するかどうかはさておき、一応、資料請求の問い合わせをしてやろう」

未羽の手からファイルを受け取り、教師は笑いながら、元の場所へと収納した。

「あたし、面倒な学校は嫌なんですけどー……」
「面倒かどうかは、行ってみなきゃわからんだろ」
「でもぉ……」

モヤモヤした気持ちを抱えて、未羽はただ唇を尖らせる。

その時の未羽は、桜立舎学苑への進学の意思はなかった。

< 続く >

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