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「……わけがわからないわ」

ボソッと呟いて、胸の奥に感じた感情のゆれを無視して、織歌は音を追い始めた。
時々、違う鍵盤を叩いていたり、モタついたりすることがあるが、それなのに、何故かスルリと頭の中に入ってくる。
ふと、織歌は、腕を組んだ指先で、トントンとリズムを取っている自分に気がついた。
それが何故か恥ずかしくて、慌てて組んだ腕をほどく。
ハッとして隣を見ると、包み込むような目で小夜子が自分を見ていた。

「……何ですか?」

つい冷たい口調できいてしまったが、小夜子は何も言わず、口元に笑みを浮かべただけで、視線をかぐらへと戻す。

「……」

モヤモヤとした気持ちが膨らんでいく。
わけのわからない感情に振り回されたまま、織歌はただかぐらの演奏する旋律を、自分の脳細胞に刻み込むという作業に没頭するフリをした。

< 続く >
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