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「あ……もしかして、この場所、邪魔だった? ごめんなさい、気がつかなくて」

これ以上、クラスメイトに嫌われるのは嫌だと思った。
だから織歌は早口に言うと、さっさと立ち上がる。

「あの、違うの、二波さん!」

委員長が織歌の腕を掴んだ。

「……?」

怪訝な顔をして委員長を見ると、彼女はサッと頬を赤らめ、手を離した。

「あ、ごめんなさい、馴れ馴れしくしちゃって!」
「……」

織歌はため息をつく。
たかが手を掴まれたくらいで、馴れ馴れしくされたと思われるような人間なわけだ、自分は。

「……で、何?」

呆れ半分、自嘲半分に、織歌は委員長を見る。
そして、名前を呼ぼうとして、自分はこの委員長の名前さえ知らないことに気がついた。
そんな自分に嫌気が差す。
「あの……さっきのあの子たちの話……聞いてたんじゃないかって思って……」
「ええ、聞こえていたけど?」

それが何か? と訊ねると、委員長はまた頬を赤く染めた。

「あの子たち、悪気はないと思うの」
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「……」

悪気がないのに、『一緒の学校に通うのは嫌だ』という内容のことを言うのが、一般の生徒の思考なのだろうか、バカバカしい。それこそ低俗な思考ではないか。
織歌はゆっくりと首を振る。
それをどう勘違いしたのか、委員長は微笑みを浮かべた。

「やっぱり、二波さんね。わかってくれると思っていたわ」
「……」

反論する気もなくして、ただ黙って委員長の言葉を聞くことにした。

「あのね、あたし、二波さんがすごく努力してるの、知ってるから」
「……」

はぁ、それはありがとうございます、とでも言うべきかしら?
いつになく意地悪な気持ちになって、織歌は目の前の少女を見つめる。

「あの、あたしもH女受けるんだけど、二波さんも受験するなら……ちょっと嬉しいな」

委員長は頬を染めて、照れたような微笑みを浮かべた。
何故かわからないながら、不愉快なものを感じて、織歌は眉を寄せた。

「どうして?」
「え、何が?」

不思議そうに問い返される。

「あなたたちは、わたしのことを鬱陶しく感じているのでしょう? なのに何故、あなたはわたしに話しかけてくるの?」
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