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「え……?」

戸惑った表情で、委員長は織歌を見ていた。
その表情に、更に苛立ちが募る。

「わたしと仲良くしていると、内申書が良くなるから? それとも、クラス委員だから?」
「そんな、あたしは……!」
「そうじゃないと言いたいの? 友達面したいのなら、下心は上手にカムフラージュしないと、成功しないわよ?」

苛立ちに任せて言い切った後、委員長を見ると、委員長は目を見開いたまま、織歌を見ていた。

「……酷い、二波さん!」

水の膜が盛り上がって、ポロッと零れ落ちる様子がスローモーションのように目に映る。

「……あ」

織歌が何か言う間もなく、委員長は身を翻して、その場から走り去ってしまった。

帰宅後、織歌は自宅の防音室に直行した。
小夜子は先に来ていて、織歌は会釈だけして、無言でフォルテールの前に座る。
鍵盤に指を乗せ、昨夜、聞いたかぐらの旋律を奏でる。
その時、すぐ近くでピシッという音がした。
顔を上げると、小夜子がブラインドを弾いたのだとわかった。
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「……気がそぞろのまま演奏するのはやめなさい。フォルテールに失礼よ」

冷たく言われ、織歌は指を止める。
「困ったわね……あなたの演奏は、昨日よりも悪くなっているわ。学校で何かあったのね?」
「決め付けないでください」
「あなたのその性格や、その態度で、同年代の女の子と仲良くできるとは思えないけど」
「……!」
ズキッと胸の奥が引きつれるように痛む。

「何よ……何よ、同年代の子と何があったって、先生には関係ないでしょう!?」
「図星、ね」
「わたしはっ! わたしだって、仲良くしたくないわけじゃない! でも、向こうが敬遠するんだもの、どうしようもないでしょう!?」
「……困った子」

小夜子はため息をついて、微笑みを浮かべた。

「織歌は思っていた以上に子供だったのね」

そっと頭を撫でられる。
それはいつもは子供扱いされていると腹立たしく感じられる行為なのに、今日は何故か心地よいと感じた。

「人は一人では生きられないのよ、織歌。そして、付き合う人が多くなれば多くなるほど、傷つくことも多くなるのだけれど……。あなたは傷つきたくなくて、誰とも付き合わないようにしているだけ」
「小夜子先生にはわたしの気持ちなんかわからない!」
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