小さな決心 3

ゆうなの言葉にドキッとした。
あの時、不機嫌だったことは自覚しているが、ライブ主に覚えられるほどの表情をしていたのだろうか。
我知らず、じわじわと顔が熱くなってくる。

「なんでこんな下手クソが、聴衆に受け入れられているのか理解に苦しむ……そんな顔で、さ」

クスクスと笑うゆうなに、織歌は赤面しながらも、毅然と言い放った。

「その通りです」
「そっか」

それだけ言うと、ゆうなはまたセッティングの作業に戻った。

「……?」

その内、また何か言うだろうと思って、その場で待っていた織歌だったが、ゆうなは何を言う気配もない。
黙々とライトの場所を調整している。
織歌はきゅっと唇を噛むと、作業中のゆうなに問いかけることにした。

「どうして、あんな下手な人と一緒に演奏なんかしようと思ったんですか?」
「……ふふ」

笑われるとは思っていなかった。
頭に血が上ったらしく、思っていたよりも強い言葉が口をついて出た。

「すごく下手だったじゃないですか! つっかえるし、ミスするし、とてもじゃないけど、誰かに聞かせられるレベルの演奏じゃなかったです!」

言い過ぎたと思っても、言ってしまった言葉はもう取り返せない。
おそるおそるゆうなの顔を見上げる。
けれど、ゆうなは気分を害した様子もなく、穏やかに微笑んでいる。

「うん、確かにそれは事実だね」

ゆうなは作業の手を止め、織歌を正面から見つめた。

「もしも、この間のライブが、観客からお金を取るようなライブだったら、彼女はここに立つだけの資格はなかったよ。それは、あたしも認める」

それは織歌にとっては、意外な言葉だった。
だからこそ、疑問が募る。

「だったら……!」

何故、あんな下手な人をあの場に呼んだのか、という疑問は遮られた。

「でも、あのライブは無料だし、この場所も無料だよ。ここでは誰だって好きな時に好きな演奏をしても良いんだ。どんな下手クソでもね。モチロン聴衆だって、好きにしても良いんだよ、聞く聞かないは自由なんだから」
「でも……」
「そうだね。それでも、この間の聴衆は立ち去らなかった。それどころか、声援を送った。何故だかわかる?」
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