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『未来への希望 1』

織歌が桜立舎学苑への進学を視野に入れた頃、未羽の方は、進路のことなど頭の片隅に追いやって、普段どおりの日常生活に戻っていた。

「ナオミ、今日のお弁当も美味しかったー!」
「うふふ……そんなに喜んでもらえると、作る甲斐があるな」

昼休みは仲良し三人組で集まって、一緒にお弁当を食べるのが未羽の日常だった。
特に、料理好きなナオミにお弁当を作ってもらえるようになって、未羽は昼休みが楽しみで仕方がない。

「明日も楽しみー!」
「あんたね……ちったぁ遠慮しなさいよ」

苦々しい表情で、ユカがたしなめる。

「あ、いいのよ、ユカちゃん。わたしが好きでやってることだから」

慌てて、ナオミが取り成した。

「わたしの得意分野って料理だけだもん。その料理を未羽ちゃんみたいに、素直に喜んでくれる人がいるのって、すごく嬉しいことだよ」

ナオミの言葉に、ユカは呆れた表情をした。

「ナオミもお人好しすぎだよ。未羽は、正直だけが取り得の、ただ空気読めないお子ちゃまなんだから、毎日作ってあげる必要はないんだよ?」
「もー、ユカったら、ひどいよー!」
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未羽が怒っても、ユカは未羽を無視して、ナオミに心配そうな視線を向けている。

「いいの、わたしが作りたくて作ってるだけだから。それに、未羽ちゃんの言葉って、今後の勉強にもなるのよ」

ユカはまだ怒っている未羽へと、チラッと視線を向けた。

「……ま、味にうるさいバカ正直者だからね、未羽は」
「もー、ユカー!」

ユカと未羽の遣り取りを見ながら、ナオミは笑っている。

「わたしね、将来、こうしてわたしが作った料理を食べてもらえるような職業に就きたいなって思ってるの」

ナオミの言葉に、未羽はポカンとナオミを見つめた。
が、ユカはナオミの夢を知っていたらしく、「ナオミなら絶対大丈夫だよ!」と応援している。

「……スゴイな、ナオミ……」

思わず、口をついて出た言葉に、ナオミもユカも驚いたような顔をして未羽を見る。

「あたし……将来のことなんて、何も考えてないよ」
「未羽は歌手になりたいんじゃないの?」

不思議そうに聞くユカに、未羽はゆっくりと首を振った。

「歌手になりたいなんて思ってないよ。あたしはただ、歌をうたうことが好きなだけ」
「好きなことを仕事にすりゃいいじゃん」
「そうかもしれないけど……でも、何だか違うんだよね……」

ユカとナオミは困ったような表情で、顔を見合わせている。
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