 |

「もう、ゆうなさんはイジワルです!」
ぷぅと頬を膨らませた未羽の頬を指先で突いて、ゆうながまた笑った。

「でも、かぐらちゃんのことに関する質問には答えられないよ?
プライバシーってのものがあるからね」
「えー!? かぐらさんが桜立舎に通ってるって聞いたから、学校でどんな風にしてるのか訊いてみたかったのにー!」
「うーん……それもちょっと答えられないなぁ」
「じゃあ、かぐらさんは将来、何になりたいか、とか……」
「そういうことは、直接、本人に聞くのが一番だよ」

やんわりと断られ、未羽は唇を尖らせた。

「……本人に直接きく機会がないから、ゆうなさんに訊いてるのに……」

未羽の拗ねた様子に、ゆうなは笑いながら、そっと頭を撫でてくれた。

「キミの気持ちもわかるけど……ゴメンね、自分の知らないところで、自分の噂話をされるのって、あまり気分の良いものじゃないだろう?」
「……」

唇を尖らせたまま、未羽は持っていたジュースのストローに唇をつけた。

「もし良かったら、キミがかぐらちゃんに訊きたいことを教えてくれるかな?
かぐらちゃんに会うことができたら、あたしから訊いておいてあげるから」
「ホントですか!?」
|
 |

拗ねた表情が一転して、明るいものになる。
その変わり身の早さがおかしかったのだろう、ゆうなは笑いをかみ殺すような表情をした。

「ああ、ホントだよ、約束する」

未羽はニコッと笑って、ゆうなを通行人の邪魔にならない場所まで引っ張ってきた。
そして、2人でガードレールに並んで腰掛ける。

「あたし……今、中学3年生なんですけど、進路に迷っててるんです。
家から通える高校に、友達と仲良く通っても良いんだけど、それじゃ何も変わらない気がして……」
「キミは何かを変えたいの?」

ゆうなの言葉に、未羽は力強くうなずいた。

「モチロンですよ!」

ゆうなはまた包み込むような優しい目をする。

「じゃあ、行動しなきゃ。
ところで、キミは何がやりたいこととかある?」
「あたしね、歌が好きなんです。
でも、別に歌手になりたいとかそういうのじゃなくて……。
だから、音楽科のある高校じゃなくても良いんだけど、でも、桜立舎学苑は学校そのものが音楽科みたいなものだって聞いて、で、ちょっと迷ってる」
「どうして迷うの?」
「だって、桜立舎は校則が厳しいし、通学に1時間かかるし……」
「寮があるって話だけど?」
「うーん……。
……実はね、はっきり言うと、あたし、お嬢様じゃないから」
|
 |