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「いいんですか?」
「ダメなら渡さないよ。演奏曲はデータがあるから、CDならまた用意できるし」

ま、その子にあげる約束もしてないんだけどね、とゆうなは笑っているが、未羽はただ手元のCDを見つめていた。

「かぐらちゃんはね、リラックスして演奏すると、意外なほどに良い音を出すんだよ。聞いているだけで勇気が出てくるような……」
「あ、わかります!
この間のライブ、あたし、かぐらさんに元気をもらいました!」
「だろう? 練習不足なのがバレバレの演奏でさえ、キミを元気にするんだよ。
彼女には才能があると思わない?」
「思いますっ!」

言って、手にしたCDをぎゅっと抱きしめた。

「家に帰るのが楽しみです!」
「そう、それは良かった。
あたしも、かぐらちゃんのファンが増えると嬉しいな」

ガードレールから降りて、ゆうなは未羽に手を差し出した。

「キミの名前、訊いてもいいかな?」
「あ……すみません。
未羽です、上月未羽!」
「そう、未羽ちゃんね。
今日はライブは休みだけど、また気が向いたら、ライブ、聞きに来てくれたら嬉しいな」
「はい、また聞かせてください!」

元気に返事をすると、ゆうなは満足そうに微笑んだ。
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「……かぐらちゃんがゲストに来てくれるかどうかはわからないけどね」
「今度はゆうなさんの演奏を聞きに行くんですってばー!」
「ホントかなぁ……未羽ちゃんの言うことだからなぁ」
「ぶー!」

クスクスと笑いながら、じゃあ、と手を上げて駅に消えたゆうなの後ろ姿を、未羽はしばらく立ち尽くしたまま、じっと見つめていた。

< 続く >
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