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見慣れない未羽の真剣な顔に、うろたえたらしい。
が、未羽は表情を崩すことなく、言葉を続けた。

「あのね……おねえちゃん、お願いがあるの」
「な、何よ?」
「勉強、教えてほしいんだ」
「は? あんた、熱でもあるの?」

意外な未羽の言葉に驚いたらしい、姉は未羽の額に手のひらを押し上げる。
それを押しのけながら、未羽は更に姉に言い募った。

「そーじゃなくて!
あたしね、この曲を演奏してる人がいる学校に行きたいの!
でも、馬鹿じゃ入れないって言うから、勉強しようって思ったんだ」

しばらく、姉は黙って未羽を見つめてから、口を開いた。

「なーるほどね……それで、勉強、か。
で、あんたが行きたいっていう、その学校ってドコよ?」

言おうか言うまいか、少し迷う素振りをしてから、思い切って、未羽は胸の中にある学校の名前を告げた。

「……桜立舎学苑」
「は!?」

未羽の言葉に、姉は目を丸くして驚いた表情をする。

「……あー、でもまぁ、未羽ならアリかもね……音楽系だし」

ふっと微笑みを浮かべた姉に、未羽はホッとした表情をした。

「お姉ちゃん……」
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「あの学校、すごいお嬢様学校みたいだけど、あんた、上品にできるの?
勉強だけじゃなくて、マナーとかも勉強した方が良さそうだけど?」
「うーん、やっぱりそうだよね……。
でも、マナーとかは合格した時に考えるとして、今はまず勉強しなきゃって思うんだ」

ぐっと握り拳を作る。
姉は、未羽を見て、くっくっと笑った。

「なるほど。ま、可愛い妹がせっかくヤル気を出してるんだから、協力してあげても良いけど〜?」

悪戯っぽい表情をする姉に、未羽はぎゅっと抱きつく。

「わーい。お姉ちゃん、大好き!」
「ええい、この現金者めっ!」

姉が楽しそうな笑い声を上げた。

「その代わり、二度とケンちゃんとの電話の邪魔しないって誓いなさいよ」
「うん、誓う誓う、何でも誓っちゃう〜!」
「……ホント、いつも軽いわよね、あんた」

ため息をつきながらも、姉はなんだか嬉しそうで、それが未羽にはくすぐったかった。
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