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それから2ヵ月後。
姉の指導の甲斐あってか、未羽は劇的に成績を上げた。
そして、ミニテストの答案を持って、両親の前に座る。

「どうしたの、未羽ちゃん、改まって……」

困惑顔の母親に、未羽は頭を下げた。

「あたし、桜立舎学苑に進学したいの!」
「は!? 桜立舎だと!?」
「え、いきなり何を言い出すの、未羽?」

未羽の言葉は予想外だったのだろう、両親はそろって表情を曇らせた。

「桜立舎に行くために、お姉ちゃんを口説き落として、頑張って勉強したの! ホラ、見て!」

96点と書いてある答案を父親の前に差し出す。

「……今まで進学に興味がなかったおまえが、どうしていきなり桜立舎なんて学校に行きたがるようになったんだ?」

父親は苦りきった表情で、未羽を見た。

「目標にしたいスゴイ人が桜立舎学苑にいるから!
初めてその人の演奏を聞いた時、『これかも!』って思ったの!
今のあたしは、将来、自分が何になりたいのかさえわからない半端な状態だけど、その人と一緒にいたら、何かが見つけられそうな気がするの!」

一息に喋った後、じっと父親の顔を見た。

「……」

父親は渋い顔をして未羽を見ている。
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そんな父親の袖を、くいくいと母が引っ張る。

「未羽にやりたいことができたことは喜ばしいことじゃありませんか」

しかし、母親の言葉にも、父親は表情を崩さない。

「それはそうだが……通学はどうするんだ? 桜立舎は遠いだろう?」

毎朝起きられるのかと遠回しに訊かれているのだと思い、未羽は決意をこめた目で父親を見た。

「お姉ちゃんより通学時間は短いけど、実は寮に入ろうって思ってる」
「寮だと!?」

途端に、父親が顔色を変えて立ち上がる。

「この家を出て、寮に入るだと!?」
「だ、だって! 寮の方が、より音楽の勉強に浸れると思うし……それに、日常生活に関するマナーの勉強は、家よりも寮の方がしやすいだろうし……っ!」
「未羽! おまえはまだ15だろう!?
親元を離れるのは、もう少し大人になってからでも良いじゃないか!」

どうやら、寮に入ると言ったことが、父の逆鱗に触れたようだ。
けれど、未羽も引き下がるわけにはいかない。

「お父さんはそう言うけど、じゃあ、学苑の寮で暮らしてる子たちは大人なの?
高等部の人の大半は寮生活をしてるけど、その人たちは大人で、あたしはまだ大人じゃないの!?」
「そういうことを言ってるんじゃない!
遠いところから入学した子は寮に入るだろうが、おまえはこの家から通学できるだろう!?」
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