未来への希望 2

「じゃあ、お父さんは、あたしが学校にさえ通えば良くて、寮でしか学べないことは別に学ばなくても良いって言いたいの!?」
「そんなことは言っていないだろう!」

売り言葉に買い言葉で、父娘の言い合いはヒートアップしていく。
なかなかわかってくれない父親に、未羽が焦れ始めた頃、リビングの入り口から姉が声をかけてきた。
「おとーさーん?   そろそろ諦めて、未羽の言い分を認めちゃった方がいいんじゃない?」
「早弓!」
「お姉ちゃん!」

一同の視線を受けて、姉がにやりと不敵な笑みを浮かべた。

「未羽の決心は変わらなさそうだよ? 未羽がどれだけ桜立舎に行きたがってるか、この子の勉強に付き合ったあたしが良くわかってる。   でも、もしお父さんたちが反対したら、この子、家出しちゃうかもね」

ケラケラと笑う姉へと、父が苦い表情を向ける。

「……早弓、おまえが入れ知恵したのか?」
「お父さんったら、やだなー、入れ知恵だなんて人聞きの悪い。   あたしは姉として、可愛い妹が大事にしてる、未来の希望を尊重しようと思っただけよ。   なーんて美しい姉妹愛!」
「……」
「ま、妹が有名になったら、あたしもその恩恵にあずかれそうだって下心もあるけどね!」

姉らしい言い草に呆れながらも、また、わざわざ援護射撃をしてくれたことが嬉しくもあり、未羽は表情を崩した。

「もー、お姉ちゃんったら」

そんな未羽に、姉は力強くうなずきかける。

「だから、お父さん、お母さん、未羽の本気、認めてやってよ。   あたしなんかより、この子の方が、よほど真面目に未来を考えてるんだから!」
「……!」

未羽は姉を見た。
姉は、しょうがないなぁ、という顔で、未羽の頭を抱き寄せる。

「お姉ちゃーん……!」

涙がぶわっと溢れてきた。

「ほら、未羽だって、お父さんに反対されて、どんなにか心細かったかわかる?   ここは、父親らしく、広くてふかーい懐を見せてあげなきゃ、可愛い未羽たんに『お父さんなんてキライ!』って言われちゃうよ?」
「……」

姉の言葉の後、ややあって、父親が盛大にため息を吐き出した。

「……仕方がないな」
「そ、それじゃあ……?」
「ああ、ここまで未羽が頑張ったというのなら、その頑張りを評価するしかないじゃないか」
「……お父さん、大好き!」

苦笑いをしている父親の首に、泣き笑いの表情で、未羽はがしっと抱きついた。
母親は、にこにこと微笑ましそうに見ている。
――こうして両親の説得作戦が成功した。
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