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部屋に戻ると、いつの間にかいなくなっていた姉が、未羽のベッドの上で寝そべっていた。

「お姉ちゃん、さっきは援護射撃、ありがとう!
お父さんを説得できたの、お姉ちゃんのおかげだよ!」

満面の笑顔でそう言うと、姉はニコッと笑って、未羽に右手を差し出した。

「……何、この手?」
「ミッション・コンプリート。ってことで、成功報酬」
「……」

ちゃっかりしている姉に、思わず絶句する。

「……これがなければ、素直にお姉ちゃんに感謝するのに」
「未羽の素直な感謝より、報酬の方が嬉しいです、ワタクシ」
「ちぇー」

渋々ながら、未羽はサイフを取り出して、姉が行きたがっていたコンサートのチケットを渡した。

「うほーん、コレよコレ!
サンキュー、未羽! またヘルプがほしくなったら、何でも言ってね!」
「もう……ちゃっかりしてるんだから」

そんなわけで、未羽は登校後、意気揚々と進路指導担当の教師のもとへ行き、進学先の第一希望を桜立舎学苑高等部にすることを告げた。

「そうか、とうとうご両親を説得したか!」
「はい! お姉ちゃんも協力してくれました!」
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「そうかそうか。上月がなぁ……。
アイツ、卒業してから一度も見かけないが、元気か?」
「元気も元気! 昨日も彼氏と長電話してました!」
「あー……そうか」

思い当たるところがあるのか、教師は言葉を濁して苦笑している。
それでも嬉しそうにしているので、未羽も嬉しくなってしまった。

「じゃあ、学校側から願書を出しておくが……入寮はどうする?」

さすがに入寮までは無理かもしれないと思っているらしい教師に、未羽はにっこりとVサインを見せる。

「入寮の許可ももらったよ!」
「そうか。快挙だな、上月!」
「はいっ!」

大きくうなずいて、未羽は「よろしくお願いします」と頭を下げて、進路指導質を後にした。

「んーと、これで願書は大丈夫でしょー。
あとは、授業をちゃんと受けて、家に帰って、お姉ちゃんが帰ってくるまで、参考書をやって、お姉ちゃんが帰ってきたら勉強を見てもらうだけ!
よしっ、今日も頑張るぞー!」

テンションは右肩上がりだ。
廊下で、「おーっ!」と右拳を上げてみる。
他の生徒に笑われても、まったく気にしない、未羽だった。

< 続く >
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