未来への希望 3

「あの……来客中に申し訳ありません。  今日の授業で少し疑問点が……」
「わかりました。  あ……っと、ごめんなさい、ミス上月。少し待っていてくださいね」
「あ、はい」

未羽がうなずいたのを見て、生徒に向き直って、教科書を挟んで何やら教えている。
丁寧な教え方だなぁと聞き流しながら、未羽はぼんやりと窓の外を見た。
見覚えのあるあのオダンゴ頭が歩いている。

「あ……っ!」

かぐらさんだ!
窓に近寄って、食い入るように見つめてみる。

(あぁ……やっぱりこの学苑の生徒だったんだぁ。
 あの楽器、弾いてくれないかなぁ……って、ここじゃ無理か)

未羽の熱い視線に気づいたのか、かぐらがコチラを見た。

(……っ!)

かぐらは未羽を見て、にこっと笑って、ぺこりと頭を下げた。
慌てて未羽も頭を下げる。
その時、かぐらの背後から、かぐらめがけて走ってくる人影が見えた。

「かーぐらーぁ!」

その人物は、かぐらに接近すると、「とうっ!」という掛け声と共にジャンプし、かぐらに抱きついた。

「きゃあっ!?」

「あ……っ」

そのままかぐらは転んでしまうかと思ったが、体勢を建て直し、抱きついてきた人物をしっかりと抱き止めて、地面に下ろす。

「もう、ちほちゃん、危ないったら!」
「えへへ、ごめーん。かぐらを見かけたら、つい……」
「『つい』でフライング・ボディ・アタックをされると危険なんだけど」
「あはは、もうしないってば。なるべく、だけど」
「なるべくじゃダメ!」

ちほという人物は笑いながら、不機嫌そうなかぐらをなだめている。

「それに、今日は外部受験希望の人が来てるんだから、恥ずかしいでしょ」
「え、そうなの?」

かぐらに指を差されて、未羽はドキッとした。
ちほは未羽を見て、にこっと微笑みかけてくる。

「あ、あなた、受験希望の人?」

突然、話しかけられて、未羽はただコクコクとうなずいた。

「えへへー……だったら、あたしたちの後輩だね!」
「ちほちゃん、まだ後輩になるって決まったワケじゃないよ?」
「いいの、いいの、カタイこと言いっこなし!  んじゃね〜! ウチの受験、頑張ってね!」

手をヒラヒラ振りながら、ちほとかぐらは連れ立って行ってしまった。

「……」

残された未羽は、唖然としながら、その背中をただ見送るだけ。
前へ -4- 次へ
●ウィンドウを閉じる●