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『HONESTIES 1』

一方、桜立舎学苑を受験することを決めていた織歌の方は、何とか生まれ変わろうと努力していた。
このままでは、桜立舎に入学しても、また同じような孤独を味わうかもしれない……。
それでは、自分は今のまま、変わることもできない。
一人は確かに気楽で良いけれど、落ち込んだ時には、寂しさが膨れ上がるような気がするのだ。
友達になろうと言ってくれたゆうなのためにも、もう少し友人と呼べる同年代の女の子との付き合い方を学びたいと思った。
ので、まずは目覚まし時計を3つ買い足して、4つの目覚まし時計から構成される音の波状攻撃で、遅刻を減らすことを心がけた。
面倒がって、足が遠のいていた主治医を受診して、不眠症の診断ももらい、その治療も開始した。
生まれ変わろうと決心したものの、既に織歌を敬遠しているクラスメイトに自分から話しかける勇気は出なかった。が、なるべく彼女たちの会話に耳を傾け、内容を理解しようと心がけた。
そして、他人から近寄りがたいと思われる原因のひとつになっている眉間のシワが薄くなるように、寝る時には眉間にシワ伸ばしのテープを張った。
それらを小夜子に話すと、努力を褒めてもらえはしたが、眉間のテープに関しては、苦笑混じりに『そんなことをするより、普段から笑顔を心がける方が良いのに……』と言われた。
もちろん、織歌にもそれはわかっていたが、何もないところで笑顔になることが恥ずかしくて、まだ無理そうだと思った。
なので、織歌は鏡の前で微笑みの練習もしてみたのだが……。
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「う……なんてうさん臭い表情……」

ひくひくとひきつる頬や口元が、柔らかな自然の笑みの形になる日は来るのだろうかと不安になってしまった織歌だった。

そんな風に、織歌が努力を始めてから少しした頃。

「そーいえば、二波さんって、桜立舎を受けるらしいよ?」
「……!」

昼休み、中庭の隅で弁当の包みを開いた矢先に、背にした壁の上部にある窓の向こうから、自分の噂話が聞こえてきた。
一瞬、どうしようかと迷った。
人の話に聞き耳を立てるのは失礼なことだとわかっている。

(でも、わたしに関することだし……)
織歌はごくりと息を呑んだ。
(それに、最近のわたしのあの努力は、ちゃんと効果があるのかしら……?)
振り返って、噂話が聞こえてくるであろう窓を見上げる。
(……聞いてみよう。
ちょっと怖いけど、もし効果が出てないのなら、もっと努力しないといけないし)

小さくうなずいて、織歌は聞こえてくる声をひとつひとつ拾っていくことにした。

「桜立舎ねぇ……。
まぁ、二波さんにはぴったりなんじゃない? お嬢様学校だし」
「二波さん、お嬢様だもんね。
遅刻ばっかだけど、頭良いみたいだから、桜立舎の外部入学でも試験に合格するでしょ」
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