HONESTIES 1

本当なら微笑みのひとつを浮かべてやれば良いのだとわかってはいたのだが、自分の微笑みのあのうさん臭さを思い出すと、織歌は無難な表情の方を選択した。
それに、この委員長なら、織歌の無表情を見慣れているだろうし、きっと大丈夫だろうとも思う。

「えと……二波さん、……あの、ね……」
「……」

じっと見ていると、委員長は握り拳を作って、突然、それでガスッと自分の顎を殴った。

「……!?」

ギョッとしていると、委員長は織歌に向けて、にっこりと微笑んだ。

「あのね……もし良かったら、明日からあたしと一緒にお弁当を食べる……なんて、どう?」
「え?」

委員長の突拍子もない行動と、彼女の言葉の内容がリンクせず、織歌はただ唖然と委員長の赤くなった顎を見る。
何故か、殴られてもいないのに、織歌が見ている内に赤くなっていった頬が不思議だとも思った。

「ひとりで食べるより、ふたりで食べたほうが、お弁当も美味しいと思うの」

それはそうかもしれないが、ふたりきりになった途端、今までの態度をネチネチ言われて、ガスッと殴られたらどうしよう……。
そんな不安に、おそるおそる委員長の目を見てみたが、委員長の目には、包み込んでくるような優しさが伺えて、いきなり他人に暴力を振るうようなタイプには見えない。

「あの……誤解されると悲しいから先に言うけど、あたし、別にクラス委員だから二波さんに声をかけてるわけじゃないのよ……?  あたしは、その……」

委員長はしどろもどろになっている。

「あたし、ずっと二波さんとお友達になりたくて……。  でも、二波さんからは『誰も近寄るな!』ってオーラが出てて……」
「……」

そんなオーラを出していると思われていたんだと、織歌はまた反省した。

「でもね、ここ最近、二波さん、ちょっと変わったかなーって……。  あたしでも、話しかけていいんだって思えるようになったから……だから……」

織歌はクスッと笑った。
自嘲の笑みではないことに、自分でも少し驚く。

「ありがとう」

意外なほど素直に口から言葉が出た。
けれども、それ以上に表情に変化は出なかったようだ。
自分でも表情筋が動いていない自覚があった。
とはいえ、内面が顔に出なくて良かったかもしれない。
自分が何を考えているのかが伝わってしまうのは、まだ恥ずかしい。
けれど、織歌の素直な言葉に驚いたのだろう、目を丸くしている委員長に、おずおずと訊いてみる。

「あの……それは、明日から……でも良い?」

気が早いと呆れられたらどうしよう。
前へ -3- 次へ
●ウィンドウを閉じる●