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いうのが現状です。
慣れない案内で申し訳ないのですけれど、わからないことがあれば、いつでも聞いてくださいね」
「はい、ありがとうございます」

頭を下げると、座るよう指示されて、手近なソファに座る。
向こうで何かしていたスミス先生がコーヒーを持ってやってきた。
いただきます、と、コーヒーに口をつける。
口の中に一瞬で広がったかぐわしい、味と香り。
その意外な美味しさに、織歌は驚いた。
織歌の驚きに気づいているのかいないのか、織歌の向かいに腰を下ろしたスミス先生は、ゆっくりと話し始める。

「添付されていた紹介状を職員一同で検討した結果……ミス二波が無事に試験をパスした暁には、特別待遇生として我が校に入学してもらうことに決まりました。
もちろん、辞退することも可能です。
ミス二波、我が校の特別待遇生になることに、異存はありませんか?」

思いがけない言葉に、織歌は唖然としてスミス先生の顔を見る。
別にからかっているわけでもないらしい。
だとしたら、自分はこの学苑では特別待遇生として過ごすことになるわけで……。

「……」

織歌は少し考えてから、ひとつだけ質問をした。

「特別待遇生って……具体的には、他の生徒とどう違うんですか?」
「正直、特別扱いはしません。ただ、学苑主催のコンクールを含めた行事に、その腕前を披露してもらう機会が増えるくらいかしらね。
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学苑生活を送る上でも、一般生徒との違いは大してありません。
授業も他の生徒と同じ教室で受けてもらうし、特待生だからと特別扱いはナシ。一般の生徒にも、在学中から既に音楽活動をしている子もいますが、音楽活動で授業を休んだ場合でも、補講や試験はしっかり受けていただきます。
あとは……学費が割安になることくらいかしら?」

なるほど、と織歌は考えた。
特別扱いはされない、ということなら、織歌の望む学苑生活を送れそうだ。

「もし、希望なら、特別待遇生だということを伏せることも可能です。
最終的にはバレてしまいますが、初期の内なら、一般生徒となんら変わりはありませんから、その間に友人関係を構築してしまえば大丈夫でしょう?」
「……!」

願ってもないことだと織歌は考える。
とにかく、織歌は普通の女の子としての生活をしたかった。
そうすれば、自分も普通の女の子になれるかもしれないと思ったのだ。
もう、ひとりぼっちで弁当をつつく生活に戻るのは嫌だった。
人付き合いは下手だと自覚しているが、何とか努力でカバーするから、とにもかくにも、誰かと楽しく『普通の女の子の生活』を過ごしてみたいのだ。
後でバレてしまうにしても、一般生徒として友人を作る猶予があるというのなら、それはものすごく好都合なことではないだろうか。

「他に質問は?」
「……特にありません」
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