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両手をバタバタしながら喋る未羽に、ゆうなの頬にも柔らかい笑みが浮かぶ。

「かぐらちゃんは元気そうだった?」
「はい、とっても!
でね、かぐらさんに抱きついた人がいたんですよー!」
「ああ……かぐらちゃんの親友のちほちゃんのことかな」
「ふーん。
ま、かぐらさんにも、そういうお友達がいてもおかしくないですよね!
でもでもっ、あたしも桜立舎に入学したら、あの人みたいに、かぐらさんに抱きつく機会があるってことですよねー!」

ゆうなはクスクスと笑っているが、未羽は気にせずに喋り続ける。

「あたしねっ、絶対に桜立舎に入るんだぁ!
そんでねっ、かぐらさんを『かぐら先輩』って呼んで、かぐらさんの一番の後輩になるんだぁ!」
「桜立舎学苑には、姉妹制度みたいなものがあるのに、『後輩』でいいの?」

ゆうなの言葉に、未羽は迷いのない瞳を向けた。

「はい! あたしはかぐらさんの可愛い『後輩』になりたいんです!」
「でも、妹の方が、後輩よりもより近くなれる気がしない?」
未羽は不思議そうな顔をしているゆうなを、同じく、不思議そうな顔で見上げた。

「妹はどこまで行っても妹でしかないもん。
でも、後輩なら……後輩なら、かぐらさんの隣に立つこともできるじゃないですか!
妹という目下のポジションじゃなくて、かぐらさんを支えることができるポジションに立ちたいです!」
「……」
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ゆうなは目を丸くして未羽を見ている。
それから、堪えきれないような笑いを浮かべた。

「あ、何ですか、その顔!」
「いや……キミは意外と野心家なんだなって思ってね……」
「どーゆー意味ですか、それ!」
「だって……ねぇ?
かぐらちゃんを支える、ねぇ……キミが……」
「ぶーぶー!」

クスクスと笑っていたゆうなは、笑いながらも未羽の頭をそっと撫でる。

「キミのそういうところ、とても魅力的だよ。
きっとかぐらちゃんにとっても、救いになるかもね」
「そういうところ……? 救い……??」

首をかしげている未羽を残して、ゆうなは準備中だったフォルテールへと向き直る。

「ついでにライブを聞いていきなよね!」

そう言われて、未羽は大きく頷いた。
ゆうなの言ったことは意味不明で理解できないことが大半だったような気はするが、あまり気にしないことにする。
考えてもわからないものを気にしても、わかるようになるわけではない。
そうこうしている内に、聴衆が集まってきて、少し場所を変える。

「みなさん、今日も集まってくれてありがとう!
これから―――」

穏やかなゆうなの声と、流れてくる柔らかな旋律を聴きながら、未羽は桜立舎学苑入学後に思いを馳せていた。
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