『友達というもの 2』

いよいよ当日。
桜立舎学苑高等部の入学試験会場は、1階部分にある2クラス分の教室を使用して行われている。
筆記試験の開始時刻は午前8時。
他の学校の入試開始時間よりは早い時間設定に、未羽は、いつもよりも随分と早起きをして、30分前に学苑に到着した。
既にスタンバイを終えてから、聞こえてきた喋り声に耳を傾けてみることにする。

「今年って、外部受験者数が多いらしいよね」
「うん、あたしも先輩から聞いたよ。  去年の受験生って、1クラス分しかいなかったんだって」
「えー、それって、今年の受験生、損してない?  合格率、下がるじゃん」
「だよねぇ。あーあ、あたし、去年受験したかったなぁ」

どうやら彼女たちは同じ学校の生徒らしい。
一人で受験にきた未羽には、お喋りできる友達がいることを羨ましかいと思ったが、自分は受験に来ているのだと思い出して、ぶんぶんと首を振る。
それから、キョロキョロと周囲の受験生を見回した。
……確かに、多い。
この人数が、もう1クラス分あると考えると、少し気分が落ち込みそうになる。
けど! と未羽は拳を握り締める。
あたしほど、この学苑の受験に命賭けてる子はいないはず!

ふっふっふ、と、笑いまでこみ上げてきた。
そうなのだ。
自分は、この学苑への入学を決意してから、今日までの間に、ずいぶんと変わったのだ。
成績だってそうだ。
姉に勉強を見てもらったおかげで、学年で最下層グループにいたのが、たった半年足らずで、トップグループ入りするようになった。
生活面でも、寮に入ることを考えて、今まで母親におんぶに抱っこだった家事も、自分から率先して手伝うようにもなった。
これだけでは、まだまだかもしれないが、それでも、自分は変わったと確信している。
だから、絶対、合格する!
根拠があるようなないような自信に、未羽はこっそりガッツポーズをした。
その間に、喋っていた子たちの話題は、好きなアーティストの話題になり、未羽の興味は急速に失せていく。
未羽はカバンに手を突っ込んで、持ってきた携帯プレイヤーを取り出すと、イヤホンを両耳に装着した。

(試験前の、リラックス・ターイム!)

ピッと再生ボタンを押すと、聞きなれたフォルテールの心地良い音が流れ込んでくる。
その旋律に身を任せて、未羽はそっと目を閉じた。
ゆうなからもらったかぐらのCDは、ここ一番というときに、未羽をリラックスさせてくれる、最高のリラクゼーションCDになっている。

(この試験にパスしたら、あのかぐらさんと同じ学校に通える!
そんで、かぐらさんの後輩になれる!
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