 |

そのまま右手を握り締め、更に左手で包む。

「シューベルトのアヴェ・マリアを……アカペラで」

背後でピアノの前の上級生の微笑んだ気配に勇気づけられた気がした。
審査員席に座っているのは3人。
スミス先生と、教頭先生と……あと一人は誰だろう?

(ま、いっか。入学したら、きっとまた会えるハズだもんね!)

気持ちを切り替えて、未羽はまた大きく息を吸い込んだ。
相手が誰であっても構わない。

(あたしはただ、ここで歌を歌うだけ……!)

ゆっくりを息を吐き出すと、驚くほどに気持ちが落ち着いている自分に気がついた。
スミス先生を見ると、微笑とともに頷かれる。
それへと、小さく頷いて、未羽は胸の奥に湧き上がる気持ちを、声と一緒に、そっと大気中に解き放つ。
この歌声がかぐら先輩に届きますように―――!
そう願いながら、静かに、かつ、豊かに、歌い上げた。

< 続く >
|
 |

|
 |