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『I'll do my best. 1』

一方の織歌はというと、話は願書提出の際の学苑案内にまでさかのぼる。
☆ ☆ ☆
校内案内を終え、校門を出た織歌の頭には、スミス先生から聞かされた、特別待遇入学生候補生の話が残っていた。

「……特別待遇入学候補生、かぁ」

辞退することも可能だが、スミス先生の話だと、あまり一般生徒との差異はないらしい。
なら、受けてみてもいいかもしれない……。
もっとも、特待生になるかどうかは、ギリギリで判断しても良さそうだ。
なら、今は、ゆうなに正式に桜立舎学苑を受験することを報告しておこう。
スミス先生に会ったこと、特別待遇入学候補生の話をされたこと、それらを話すと、ゆうなはどんな反応をするだろう……?
そう考えると、織歌の足は、自然と軽くなる。
が、3歩、ステップを踏んだだけで、織歌の足はピタッと止まった。
しばらく立ち止まった後で、織歌はまた駅に向かって歩き始める。
お礼を言いに行くのに、手ぶらで行くのも失礼だと思い直した彼女は、一旦、自宅へ戻ることにしたのだ。
☆ ☆ ☆
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「お帰りなさい。
桜立舎、どうだった?」

自宅に戻ると、いつものお手伝いさんではなく、小夜子が出迎えてくれた。

「どう……と言われても……。
スミス先生から、特別待遇入学候補生として名前が挙がっている、と言われたくらいかしら……」
「特待生!?
まぁ……家柄と実績を考えると、そうなっても当然かもね」

小夜子に座るよう促され、応接間のソファに腰をかける。

「ところで、スミス先生というのは、どんな先生だった?」

目をキラキラさせて聞いてくる小夜子に辟易しながら、織歌は先ほどまで会っていた女性の、薄いエメラルドブルーの印象的な瞳を思い浮かべる。

「瞳の力の強い、綺麗な女性の先生でした。
担当科目は、きっと英語でしょうね。外国の血が混じった外見をされていて、外国語が母国語のようでしたし。
日本語には堪能なようでしたが、特定の言葉に少しだけナマリが残っていました」

織歌の分析に、小夜子は笑いをかみ殺したような顔をしていた。

「……何かおかしかったでしょうか?」
「織歌……あなた探偵にでもなるつもりなの?」

笑いながら言われて、サッと織歌の頬が上気する。

「でも、あなたの読みは間違っていないわ。
そう……スミス先輩、桜立舎に戻って、今は先生をやっていらっしゃるのね」

懐かしそうな小夜子の表情に、織歌は怪訝そうな目を向けた。

「お知り合い……だったのですか?」
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