I'll do my best. 1

が、彼女は、織歌の警戒した様子に気づいているのかいないのか、カバンから小さな包みを取り出した。

「あの……これ……。  口に合うかどうかわからないけど……」

差し出されたので、思わず受け取ってしまうと、織歌はそっとその包みを開いた。
ふわりと漂ってくる、バニラの優しい香りが鼻をくすぐる。

「クッキー?」
「受験勉強の気晴らしに作ったの。  甘いもの、嫌いだった?」
「いえ、そういうわけではないけれど……」

 言いよどむ織歌の口調に、委員長が不安そうな顔をした。

「ないけれど……?」
「こういうのって、校則違反じゃないのかな、と思って」
「…………」

織歌の気まずげな言葉に、委員長は目を丸くした後、小さく吹き出した。

「何故、笑うの?」

ムッとして尋ねてみたが、委員長は笑ったまま、包みごと、織歌の手のひらをそっと両手で包み込んだ。

「あたしが校則違反をしたのを知っているのは、二波さんだけ。  その二波さんが今すぐに証拠を隠滅してくれれば、あたしはお咎めナシだと思わない?」

そう言いながらも、まだ笑っている。

「それはそうかもしれないけれど……」
「さ、早く胃袋の中にしまって?」

「…………」

織歌は眉間にシワを刻んだまま、小さなクッキーを摘み上げ、口の中に放り込む。

「どう?」

委員長は、今度は神妙な顔で、織歌をじっと見ていた。
凝視されて、居心地の悪さを感じながらも、織歌は小さく頷く。

「美味しいけど?」

それが何か?と聞こうとしたところで、委員長は、はっきりと苦笑した。
コロコロと変わる表情が不思議で、織歌はまた眉を寄せる。

「さっきも訊いたけれど、あなたは何故、笑うの?」

委員長は何でもないことのように答えてくれた。

「おかしいからよ」
「何がおかしいの?」
「二波さんの反応がおかしいから」
「…………」

ストレートな委員長の言葉に、思わず黙り込んでしまう。
自分の人付き合いの下手さ加減など、言われなくても、嫌というほど知っている。
委員長は、手作りのクッキーをダシにして、自分をからかっているのだろうか。
だとしたら、手の込んだことをする……。
そう考えて、織歌は小さな溜め息をついた。

「ねぇ、今、妙なことを考えてるでしょ?」
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