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委員長は呆れた表情で織歌を見ている。
織歌は正直に頷くことにした。

「わたし……こういう時、どういう反応をすればいいのか、わからないから。
不快にさせてたら、ごめんなさいね」

そう言ってから、ペコリと頭を下げると、またクスクスと笑われた。

「そういう時の対処方法、教えてほしい?」

思ってもいなかったことを言われ、織歌は顔を上げる。

「あのね、アナタがクッキーを食べてくれた時、あたしがどういう気持ちで、あなたに『どう?』って訊いたのか、わかる?」

その質問には、黙って首を横に振る。

「そっか……。
あたしね、お菓子作りには自信はあるんだよね。
だから、あなたにこのクッキーを食べてもらって、喜んでほしいって思ったの。
あたしはね、あなたが来るまで、『喜んでくれるかな、美味しいって言ってくれるかな? それとも、口に合わなくて、不味いって怒られるかな?』ってドキドキしてたんだよ。
でね、『普通なら、空気を読んで、不味くても、不味いって言わないよね。せめて、二波さんの口に合ってくれたら嬉しいな……』って、そう思ってたの」

複雑な微笑みを浮かべて、委員長はそう言った。

「なのに、二波さんの返事は、『美味しいけど?』なんて素っ気ない上に、『どうしてそんなことを訊くの?』って言いたげなんだもん。
あたし、ガックリきちゃったわ」
「…………」
「不味かったら不味いって言ってくれても全然いいんだけど、美味しいって思ってくれたら、素直に美味しいって言ってほしいな」
「……そういうものなの?」
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怪訝な顔で尋ねると、委員長は苦笑混じりのウィンクを返す。

「好きな人には、褒めてもらいたい……、織歌さんはそう思わない?」
「……!」

ハッとして委員長を見る。
委員長はうっすらと頬を染めていた。

「あ、あの……クッキーのお礼を要求するわけじゃないけど……、織歌さんって呼んじゃダメ、かな?
そう呼ばれるの、迷惑、かな?」
「め、迷惑じゃないけど……」

気恥ずかしい気分になって、織歌は慌てて目をそらした。

「今まで……そんな風に呼んでくれる人、わたしの周囲にはいなかったから……少し、驚いただけ」

何故か、頬がカーッと熱くなる。

「じゃあ、あたしが織歌さんのお友達、一番乗りなんだね! 嬉しい!」
「…………」

胸の奥がくすぐったくてたまらない。
クッキーの包みを乗せたままの右手を、柔らかな両手でキュッと握られたけれど、全く不快さは感じなかった。
ただ、胸がドキドキしていただけで―――。

「ねぇ、織歌さん!
あたしのことは、エリカって呼んでくれる?」
「エ……リカ……?」
「そう、あたしの名前!
名前負けしてるでしょ?」
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