I'll do my best. 1

クスクス笑いながら、自虐的な言葉を紡ぐエリカに、織歌は唖然とする。
確かに、エリカの地味な外見に比べると、この名前がアンバランスな気もしないでもない。
が、委員長は、この派手な名前を気に入っているようだ。

「うふふ……あたしね、織歌さんにエリカって呼んでもらえる日が来ることを、亡くなったおばあちゃんに、毎日祈ってたの」
「……亡くなった、おばあさま……?」
「そうなの! この名前、おばあちゃんがつけてくれたのよ!  おばあちゃん、昔、女優になりたかったらしくて、その時、エリカって芸名をつけるんだって心に決めてたんですって。  でも、おばあちゃんの子供は、お父さんしか生まれなかったの。さすがに男の子に『エリカ』ってつけるわけにもいかないでしょ? だから、わたしにつけてくれたんだって。お母さんが兄弟多かったから、母方のおじいちゃんとおばあちゃんから文句は出なくって、平和解決だったんだって!」
「……そ、そうなの……」

どう反応すれば良いのかわからず、織歌は引きつった笑みを浮かべる。
が、エリカは、織歌の笑みが引きつっていたのは、笑うことに慣れていないからだと、好意的に受け取ったらしい。

「織歌さんとわたしの名前って、一文字しか違わないのよね。何だか嬉しい偶然よね!」
「ええ……そういえば、そうね」
「卒業まで、もうそんなに間がないけど……わたしね、織歌さんとたくさんのステキな思い出を築いていきたいな」

素直なエリカの言葉に、胸の奥があたたかくなる。

間もなく、チャイムが鳴って、エリカは自分の席に戻っていった。
織歌も、クッキーの包みを両手で隠すように持ったまま、自分の席に着く。
授業が始まる前に、一つつまみあげて、そっと口の中に入れた。
ふわりと優しい甘さが口いっぱいに広がる。

『卒業まで、もうそんなに間がないけど……わたしね、織歌さんとたくさんのステキな思い出を築いていきたいな』

そういう風に言ってくれた人は、初めてだった。
織歌は、こみ上げてくる嬉しさを噛み締めながら、クッキーをそっと包み直し、1時間目の授業を受けるための準備を始めた。


< 続く >
 
前へ -5- 次へ
●ウィンドウを閉じる●