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「ちょっと待っててくれる?」

織歌の返事も聞かずに、駆け出したゆうなの背中を見つめながら、織歌は逃げることもできないまま、ガードレールの上、ただちょこんと腰掛けていた。
やがて戻ってきたゆうなの手には、ペットボトルのお茶が2本握られていた。

「はい、どうぞ」
「え?」

その内の1本を差し出されて、反射的に受け取ってしまってから、また慌てる。

「えと、このお茶は……?」
「最中って美味しいけど、そのまま食べるのはキビシイもんね!
お菓子、開けてもいい?」

屈託なく言われ、おずおずと頷いて、織歌はゆうなが菓子折りを開ける手元をただ見つめていた。

「うわ、美味しそう! いただきまーす!」

嬉しそうな笑顔が向けられて、ドキッとする。

「ほら、織歌ちゃんも食べなよ!」

緑色の包み紙の最中を一つ、手のひらに握り込まされて、何となく笑いたい心境になってきた。

「こういうのってさ、一人で食べるより、二人で食べた方が美味しいよね」

ニコッと微笑みかけられて、ぎこちなく微笑みを返す。
こういう時に、相手が嬉しくなるような、柔らかでキレイな微笑みを
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返すことができればいいのに。
そう思うと、悔しいような気持ちが湧き上がってきたが、今は練習あるのみと思い返すことにして、織歌は最中の包み紙を剥がした。

「やっぱり、織歌ちゃんは笑った方が可愛いよ」
「え……?」

手の甲で、サラリと頬を撫でられる。
再びドキッとした。

「あんまり笑うことを意識しすぎないで。織歌ちゃんは、ちゃんと笑えてるから、大丈夫。
素直に、ありのままの自分でいることを心がけると、自然と感情も豊かになってくるし、感情につられて、自然な笑顔も浮かぶようになるよ」
「そう……でしょうか……?」
「そうだよ!」

おずおずと呟くと、自信たっぷりに肯定されて、表情が緩んだ。

「だったら……嬉しいです」
「大丈夫だよ!
だって、織歌ちゃん、努力してるよね、普通の女の子になろうって」
「……!」

また、心臓が大きく鳴った。

「そのせいかな……織歌ちゃん、この間よりも、すごく穏やかな顔をしてるよ。
見違えるような表情で、さ」
「…………」

嬉しい、と思った。
努力していたことを気づいてもらえたことも、その努力を評価してもらえたことも。
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