I'll do my best. 3

まりの答えに、織歌は首をかしげる。

「なら、先ほど、緊張していたわたしに、『去年の自分みたい』と発言したことは一体……?」
「…………」

まりは黙って紅茶を飲んでいる。
繊細な細い指が、カップを置いた。

「あなたが、どんなプレッシャーと戦いながら、ここの入学試験を受けたのかはわからないけれど、去年のわたしは、あなたに負けないくらいのプレッシャーを感じていたことがあるのよ」
「……プレッシャー、ですか?」
「そうよ。  伝統ある桜立舎学苑の生徒会長……ずっと憧れていたポジションだったけれど、いざ指名されると、手足が震えて……わたし、寮に戻ってから、あまりにも無様な様子を晒してしまって、同室者にからかわれてしまったの」

ひどく優しい表情でクスクスと笑うまりに、織歌の緊張が解けてゆく。
しばらくの間、まりとポツリポツリと他愛ない話をしていたつもりだったが、意外と時間が経っていたらしい。
小さなノックの音と共に、生徒会室に別の生徒が入ってきた。

「あ、二波さんですね。  お待たせしてしまって、申し訳ありませんでした。  ピアノと声楽の審査は、教頭先生がすることになったので、学苑長がすぐいらしてください、とのことです」

やわらかそうな髪を両サイドで二つに結んだ生徒が、柔和な微笑みを浮かべる。

「彼女は2期生の二条院琴美さんよ。  あなたが入学したら、きっと一番お世話になる先輩ね」
「お世話だなんて……わたしの方こそ、新入生の方から、いろいろ学ばせてもらうつもりです」

謙虚な言葉に、織歌はペコリと会釈をして、まりに紅茶のお礼を言った後、案内をするという琴美について、生徒会室を出て行った。

☆ ☆ ☆

「先日はお会いできなくて残念でした。  急な出張が入ってしまったもので……今日もお待たせしてしまって、ごめんなさいね」

「いえ……そんな」

出されたコーヒーに口をつけながら、織歌は正面に座った学苑長の真意を読み取ろうと観察する。

「それにしても、先ほどの演奏は、大変素晴らしいものでしたよ、二波さん」
「はい、ありがとうございます」
「もうスミス先生から聞いていると思いますが、あなたを特別待遇生として入学させようという動きが出ています」

本題を切り出されて、織歌は身を硬くした。

「それについて、二波さんご自身の意見を聞きたいのですが、如何ですか?」

織歌は小さく頷いた。

「特に異存はありません。  わたしは入学する気もない学校を受験するほどヒマではありませんし、この学校に入学できるのなら、
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