出会いに万歳!

「あっ、言葉がキツかったかもっ。あたしの方こそ、ごめんねー!  あたし、すぐムキになっちゃうんだよねー、失敗、失敗!」

屈託なく笑う未羽に、織歌の表情も柔らかくなる。

「わたしも……この学苑に入れなかったら、浪人するわ。  他の学校へ行く気なんてないもの」

心の裡を呟くように言うと、未羽が目を丸くした。

「え、あなたも?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、あたしたち、一緒ね!」

キャッキャッと笑いながら、未羽が織歌の両手をギュッと握り締める。
今までであまり経験のないスキンシップを、ほぼ初対面の人にされて、織歌はただ固まってしまった。

「えへへ、あたし、あなたのこと、気に入っちゃった!  ね、どこかでちょっと喋らない?」
「え……?」

固まったまま、織歌はただ目を丸くする。

「はい、決まりね!  あたしたちの出会いにバンザーイ!  さ、行こ行こ〜!」

人の話を聞かずに、握った織歌の手を繋ぎなおして、未羽はずんずんと進む。

「あ、あの……上月さん?  ちょっと!?」

織歌は困りきった声で未羽の名前を呼んだが、テンションが上がりきっている未羽には聞こえないらしい。

どうしたら良いのか混乱しながらも、胸の奥に湧き上がる気持ちは、不快なそれではない。
織歌は小さく溜め息をついて、未羽の先導についていくことにした。


☆ ☆ ☆


未羽に連れていかれたのは、桜立舎学苑の最寄り駅でもある、K駅の南口ロータリーだった。
つい先日、ゆうなが腰掛けていたガードレールに、未羽が先にちょこんと腰掛けて、織歌へと手招きをしている。
偶然ってあるものなのね、と思いながら、織歌は未羽の隣に腰をかけた。

「ね、フォルテールって難しい?」
「難しいか、といえば……そうなのかもしれないわね。この楽器の音が鳴らせるのは、ごく一部の限られた人間だけだから……」

そう答えると、未羽は不思議そうな顔をする。

「ふーん、そうなんだ。  ってことは、あなたはその『限られた一部の人』なんだぁ……。  いいなぁ、音が鳴らせて」

未羽の言葉に、織歌が訊ねる。

「あなたもフォルテールを演奏したいの?」
「うーん……そうだなー。  できるものなら、演奏してみたい、かな」

呟くように言う未羽は、頬を染めて笑顔を浮かべる。

「あたしね、一緒に演奏したい人がいるんだ」
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