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「ユカ……?」

そっと手を伸ばすと、未羽の手を撥ね退けるようにして、ユカはその場にうずくまってしまった。

「ユカ?」

ユカの肩が小刻みに震えている。
途切れ途切れの嗚咽が聞こえてくる。

「な、泣かないでよ……ユカ……」
「泣いてないっ!
泣いてなんか……うるさくて騒がしいアンタと別れて、せいせいしてるんだから!」
「…………」

どうしたら良いのかわからずに立ち尽くしている未羽の隣から、苦笑混じりに進み出たナオミが、ユカの肩にかがみ込む。

「よしよし」

腕を伸ばしたナオミが、そっとユカを抱き締めている。
そのナオミの首に抱きついて、ユカは号泣し始めた。

「もー、ユカったら、そんな風に泣いちゃったら、未羽ちゃんも困っちゃうよ?
ごめんね、未羽ちゃん。
ね……ユカ、わたしが未羽ちゃんを引き止めておくから、顔を洗っておいでよ」

ポンポンと背中を叩くと、コクリと頷いたユカは、顔を隠すようにしながら、教室を小走りに出て行った。
苦笑しながら、ユカを見送ったナオミが、寂しそうに微笑む。

「ユカ、ね……きっと未羽ちゃんのこと、好きだったんだよ。
それはわかってあげてね」
「うん、あたしもユカのこと、大好きだよ」
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「…………」

絶句した後で、小さくナオミが笑う。

「うーん……そうじゃなくて、ね。
ま、未羽ちゃんに通じるとは思ってなかったけど」
「……ナオミ?」

ナオミの苦笑に、未羽は首をかしげる。
未羽の視線に気づいているのかいないのか、ナオミは窓ガラスに手を当てて、夕焼けに染まった校庭を眺めている。

「実はね、未羽ちゃんが桜立舎に行くことを決めたこと、ユカ、すごく喜んでたんだよ。
でもね、本心ではすごく複雑だったと思う。
あのライブに連れてさえ行かなかったら、未羽ちゃんは今までと同じように、わたしたちと同じ学校へ進んだのに……って。
……ふふ、意地っ張りな子だから、そんなこと、口が裂けても言わないけどね」

親友として過ごした3年の間、ナオミは一歩控えて、暴走しがちな自分とユカの後ろを黙ってついてくるだけの、控えめな子というイメージしかなかった。
そのナオミの横顔を見ながら、いつの間にか、彼女の横顔が大人っぽくなっていることに、未羽は気づいた。

「未羽ちゃんは、新しい学校でも、わたしたちよりも仲良しの、新しい友達を作っちゃうんだろうね」
「……ナオミ」

どう返答すれば良いのかわからずに、未羽はただ戸惑ったまま、親友の名前を呼ぶ。
振り向いたナオミは、夕日の逆光になって、表情が読み取れない。
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