巣立ちの日

 だとしたら、将来がしんぱーい!」
「誰が何だって!?」

軽口を叩いていた未羽の頭を、いつの間にか現れていたユカが、ぺシッと叩いた。

「あたしほど自分を犠牲にしてまで、あんたのために尽くしたヤツはいないってのに、その言い草は何だ!」
「えへへ〜、感謝してます〜。  でも、ユカがイジワルなのは本当のことだもん!」
「にゃにおぅ!」

ガシッと頭をホールドされる。
きっとこれが、中学最後の悪ふざけ。

「きゃーん、痛い、痛いってば〜!」

ケラケラと笑う未羽の頬を、また、新しい涙がこぼれ落ちた。

☆ ☆ ☆

家に帰って、ベッドの上でくつろぎながら、未羽はアルバムを捲ってみる。
どの写真にも、ユカとナオミと自分の3人が仲良く写っている。
未羽が撮ったユカとナオミのじゃれあう写真の一枚を手に取る。

「あれ……?」
ふと、ナオミの表情がひどく違うことに気づいた。
別の一枚では、未羽に悪戯を仕掛けているユカのナナメ後ろで、穏やかに笑っているナオミ。
そして、また手にした一枚は、未羽を真ん中にして、3人で腕を組んでいる写真。

良く見なければわからないが、ユカと二人で写っている写真のナオミの表情は、なにやらとろけるように優しい。

「…………」

そっか……。
未羽は小さく笑う。
……ユカがあたしばっかり構ってるのを見て、ナオミはどんな気分だったのかなぁ?
そんなことを考えながら、未羽はアルバムを片付けることにした。
ユカのために、泣きながらも微笑むナオミの姿が、脳裏をよぎる。

「……イライラするナオミなんて、見たことないけど、あんまり相手にしたくないなぁ」

クスッと笑って、ボフッとベッドに倒れこむ。

そして、入学式を待ち望みながら、そのまま夢の世界へと旅立っていった、未羽だった。

< 続く >
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